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目の保養 〜蓮池へ向かう、静かな朝〜

最近の天気はどこか気まぐれで、夏らしい暑さかと思えば、急に涼しくなったりと落ち着かない。空模様も気分も、どことなく「パッとしない」日々が続いている。

そんな時に限って、なぜか無性にカメラを持って出かけたくなる衝動に駆られる。

特に、被写体を探す楽しみは尽きない。季節ごとの花、風景、野鳥。

ふとした瞬間に「これは撮っておきたい」と思える場面が、どこかに隠れている気がして、ネットでこの時期に撮れるスポットや見どころを検索するのが日課のようになっている。

そんなある日のこと。何気なく窓の外を眺めていると、雀が軒先にちょこんと留まり、こちらをじっと見つめていた。

その一瞬、「これは撮れるかも」と思い、慌てて望遠レンズを取り出してカメラに装着。そっと構えて、静かにシャッターを切る。

やっぱり、自分は写真を撮ることが好きなのだ。撮れ高に関係なく、こういう「瞬間」を探し出す行為そのものが、何より楽しい。

しばらくして、気になる情報を見つけた。筑波山の麓に、蓮が見事に咲き誇る池があるらしい。蓮といえば朝が勝負。

思い立ったらすぐ行動。

次の休みに、早朝からその池を目指すことに決めた。

そして迎えた休日の朝。

珈琲屋の特典で、いくつかの種類の豆からその日の気分に合う豆でドリップ。

保温ポットに詰め込み、これで準備は万端。

まだ陽も高くない6時過ぎに出発。

道中は涼やかな風が吹き抜け、車窓から見える田園風景が心地よい。

目的地に着くと、池の周囲には誰の姿もない。静寂の中、蓮の花が凛と咲いている。

花びらが、まるで光を纏ったように輝いている。その美しさに、しばらくはカメラを構えるのも忘れて見惚れてしまった。

ゆっくりとレンズを変えながら、蓮の花一つ一つに向き合う。

背景の山、静かな水面、そして時折聞こえる鳥のさえずり。何もかもが心を整えてくれるようだった。

人混みのない場所で、自分だけの時間に浸る贅沢。

こうして一日の始まりを迎えることができるのは、平日休みならではのご褒美だ。

帰り道、ポットに残った珈琲を飲みながら、また次はどこへ行こうかと考える。

カメラを持つことで、世界が少し違って見える。

季節の揺らぎの中にも、確かな「美」がある。それを追いかけて、またシャッターを切る旅が始まる。

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