試飲という小さな体験から始まる、珈琲との出会い

人の好みは、本当にさまざまです。
酸味が好きな方、深煎りのコクを好む方、すっきりした後味を求める方――。
同じ「珈琲」という飲み物でも、その楽しみ方は十人十色です。

だからこそ、当店では試飲をとても大切にしています。

テイクアウトの一杯であれ、珈琲豆のご購入であれ、
「どんな味かを実際に飲んでみてから選びたい」と思うのは、自然なこと。
私自身も、昔からそう感じていました。

その気持ちを自分の店に反映させたくて、
可能な限り、お客様に珈琲を試飲していただいてから選んでもらうスタイルを続けています。

一緒に味わい、選ぶ時間もまた楽しい

お店が混み合っていない時には、
私自身が試飲のお相手をしながら、感想を聞いたり、おすすめをお伝えしたりすることもあります。

「これ、思ったよりまろやかですね」
「もう少し苦みがあった方が好きかも」
そんな一言から、お客様と珈琲の新しい関係が生まれる瞬間がとても好きです。

そして、気がつけば珈琲の話から日々の出来事、趣味の話へと広がっていく――。
一杯の珈琲が、人と人をつなぐきっかけになる。
そんな場面に立ち会えることが、私にとっての何よりの喜びです。

出会いとつながりを大切に

この店を始めた理由のひとつが、
「珈琲を通じて人とのつながりを育む場所を作りたい」という想いでした。

試飲は、ただ味を確認するためのものではありません。
それは、お客様と珈琲が出会うきっかけであり、
私たちが心を通わせる、小さくて大切な時間でもあります。

これからもその気持ちを大切にしながら、
「まずは一杯、味わってみてください」とお声がけしていきたいと思っています。

お気軽に、そして気楽に。
あなたの「好きな一杯」を一緒に見つけるお手伝いができたら嬉しいです。

「筆」という存在を思い出した日

ふと、「筆で文字を書くことが全くなくなったなぁ」と思った。
正確に言えば、昔から頻繁に筆を使っていたわけではない。

それでも、かつては年に何度か、筆や筆ペンを手にする機会があったように思う。

例えば、暑中見舞いや年賀状。
季節の挨拶を、筆ペンで丁寧に綴っていた頃があった。あの少し緊張しながら文字を整える時間。うまく書けたかどうかよりも、「気持ちを込めて手で書く」ことに意味があったのかもしれない。

けれど今では、それすらもパソコンやスマートフォンに置き換わってしまった。印刷された美しいフォントで作った挨拶状を出すことすら、最近ではすっかり減ってしまった。
「LINEで済ませた」「今年は出していない」――そんな声が聞こえるたびに、少しだけ寂しいような気もする。

そうやって筆どころか、ペンを持つ機会もどんどん減っている。
文字を書くことそのものが、いつの間にか特別な行為になってしまった。実際、最近は簡単な漢字すら思い出せなくなっていて、「あれ、こんな字だったっけ?」とスマホで確認することもしばしば。

先日、そんなことを思い出したのは、休日の午後。
お気に入りの珈琲を片手に、久しぶりにスマホの写真を整理していたときだった。過去の年賀状の写真が出てきた。そこには、かつての自分の手書きの文字が写っていた。拙いながらも、そこには温かさがあった。時間をかけて書いた思いが、今になって少しだけ懐かしく感じられた。

筆に限らず、「手で書く」という行為は、便利さに押し流されてしまったもののひとつ。
けれど、それが持っていた静けさや丁寧さは、今もきっと心のどこかに残っている。

たまには筆を持って、誰かに手紙を書いてみようか。
あるいは、自分自身のために、ゆっくり文字を綴ってみるのもいいかもしれない。
忘れかけていた日本語の手触りを、もう一度感じるために。

紫陽花探し

先月の25日にお店をオープンして、ちょうど1ヶ月。
怒涛のように毎日が過ぎていって、気がつけばあっという間にこの日を迎えていました。

会社員時代とはまったく違う日々。
慣れない接客業、覚えることばかりの毎日、そして責任の重さ…。
「やりがい」はもちろん感じていますが、やっぱりどこかで心も体も緊張し続けていたようで、少しずつ疲れが溜まっていたのかもしれません。

リフレッシュが必要だ、と実感

ふと「ちゃんと休もう」と思えたのが今回の連休。
仕事の合間にスマホで行きたい場所を検索しながら、久しぶりに“自分のための時間”を作ることにしました。
何もしない休みもいいけれど、やっぱり私はカメラ片手にどこかを歩きたい。

朝8時、出発

目的地は――雨引観音(あまびきかんのん)。

「紫陽花」で検索すると、必ず名前があがる有名スポット。
どうやら桜川市にある、紫陽花の名所のひとつらしい。

そういえば、つくばに移住してからというもの、観光らしい観光はあまりしていなかったなぁと、ふと思う。
横浜にいたころは、休日にふらっと鎌倉へ出かけては、海や寺社を撮影していたっけ。
あの自由な時間が好きだった。

つくばにはつくばの良さがあるはず。
その魅力を、少しずつでもカメラにおさめていけたらいいなと思いながら、車を走らせました。

雨引観音で感じた静けさと美しさ

到着してすぐ、目に飛び込んできたのは、色とりどりの紫陽花。
境内のいたるところに咲く花たちは、雨上がりの空気をまとうようにしっとりと輝いていて、とても美しかった。

観音様に見守られながら咲くその姿は、どこか神秘的で、心がすーっと静かになるような感覚。

カメラのシャッターを切るたびに、自分の中にたまっていた“何か”が少しずつほぐれていくような気がしました。

「休むこと」も、大切な仕事

今回はただの休みではなく、自分を取り戻すための時間になったような気がします。
カメラを持って歩くこと。
花を眺めること。
自然の音に耳を傾けること。

忙しさの中でつい忘れていた“自分らしさ”を思い出させてくれた、そんなひとときでした。

また、明日から頑張るために、

時々こういう時間を持つことの大切さを、改めて実感した一日。

ネットショップOPENのお知らせ!

いつも応援ありがとうございます。
このたび、念願だった珈琲豆のネット販売をスタートいたしました!

これまで丁寧に向き合ってきたスペシャルティ珈琲を、もっとたくさんの方に楽しんでいただきたい

そんな想いから、オンラインショップをオープンしました。

当店で扱うのは、厳選したスペシャルティグレードの生豆。
それぞれの豆が持つ個性を最大限に引き出せるよう、少量ずつ丁寧に自家焙煎しています。

果実味あふれる華やかな香り、しっかりとした甘み、まろやかな後味。
おうち時間が、ちょっと特別で豊かなひとときになるような、そんな一杯をお届けできればと思っています。

焙煎したての新鮮な豆を、心を込めて発送いたします。
ぜひ、あなたのお気に入りの一杯を見つけてみてください。

ご来店を心よりお待ちしております!

クラッシックカメラと珈琲

ある日の贈り物

 先日、知り合いから思いがけない贈り物をいただきました。

それは、時を重ねた質感をたたえるクラシックカメラ
その隣には、香ばしい香りを封じ込めたグアテマラ・ロズマ No.9の中煎り珈琲豆のドリップパックをそっと添えてみました。

重厚感のあるメタルボディに、長年使い込まれた味わいがにじむグリップ。
シャッターを切ると、現代のデジタルカメラにはない「手ごたえ」と「音」が、静かに心に響きます。

珈琲は、華やかな香りと、どこか懐かしさを感じる柔らかな苦味。
まさに、五感を静かに刺激してくれるような贈り物でした。

静かな時間の始まり

ある日の午前中、店のカウンターにカメラを置き、ゆっくりと珈琲を淹れる。
挽きたての豆の香りが漂う中、ゆっくりとお湯を注ぎながら、カメラのファインダーを覗く。
光と影のバランスを確かめて、息を整え、シャッターを切る。

静かな時間でした。
スマートフォンでは味わえない、「一枚を撮る」という行為の意味。
一杯の珈琲がもたらす「深さ」。
どちらも、“待つこと”と“向き合うこと”の大切さを教えてくれます。

想いを受け継ぐということ

この贈り物をくれた知人は、
「お店の雰囲気に合いそうだと思って」と、やさしい言葉を添えてくれました。

物は、ただそこにあるだけでは意味を持ちません。
使い手の想いや手触りを受け取ってこそ、初めてその価値が生まれるのだと感じます。

このクラシックカメラも、珈琲も、単なる道具や嗜好品ではなく、
“贈り物”として、私の中に静かに、確かな時間を刻んでくれました。

終わりに

カメラと珈琲。
どちらも少し不便で、少し手間がかかるもの。
けれど、だからこそ私たちに、“丁寧に生きる”ことの豊かさを思い出させてくれます。

贈り物とは、モノそのものではなく、
それに込められた時間と気持ちなのだと、あらためて感じました。